航空機部品を製造する企業が、子ども用スポーツ車いすを開発した訳とは⁉

産振財団が支援する神戸エアロネットワーク(KAN)と、兵庫県立福祉のまちづくり研究所が共同で開発した子ども用スポーツ車いすが、兵庫県立福祉のまちづくり研究所の創設30周年記念式典でお披露目されると聞き、取材に行ってきました!

会場の兵庫県公館

神戸エアロネットワーク(KAN)とは?

神戸エアロネットワーク(以下、KAN)は、2014年に(一社)神戸市機械金属工業会の部会として設立され、神戸を拠点とする航空機部品の製造実績のある企業や、航空機産業への進出を目指す企業23社で構成されています。

KANに所属する企業は、人の命に関わる航空機部品を製造しているため、航空宇宙産業における品質マネジメントシステムの国際的な認証規格である「JISQ9100」を所有しています。

なぜ航空機の部品を製造する企業が車いすを開発したのか?

時は2020年4月に遡ります。

KANに、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)という素材の加工技術をもつ(株)テックラボが入会しました。

この炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、炭素繊維で樹脂を強化した複合材料で、高い強度と軽さが特徴です。

入会後、関係者でテックラボに企業訪問を行い、CFRP技術や、今後の活用拡大への思いをヒアリングしました。

実はこの時、関係者の中に車いす使用者がおり、日頃から感じていた「車いすの重さの負担」という課題を高強度かつ軽いというCFRPの特性を活かして解消できないかというアイディアが生まれました。

このアイディアに賛同したKANメンバーは、「航空機部品製造技術の粋を集めたMade in KOBEの車いす」への一歩を踏み出します。

その後、障がいを持つ方や高齢者、支援する方々のニーズを反映した「本当に役立つもの」の開発・実用化に取り組んでいる兵庫県立福祉のまちづくり研究所に相談。

こうしてKANと福祉のまちづくり研究所が連携して「航空機部品製造技術の粋を集めたMade in KOBEの車いす」の研究・開発をしていくことが決まりました。

お披露目された「子ども用スポーツ車いす」とは?

今回の記念式典でお披露目されたのは、(株)テックラボと、伊福精密(株)の航空機部品製造技術を活用した、車いすに乗る子どもたちがスポーツを始めるのに適切な、軽量かつ、スポーツの種目にとらわれない“汎用型の子ども用スポーツ車いす”です。

主構造にテックラボの高強度・高剛性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用することで、5.7㎏という超軽量車いすが完成しました。

写真左から、

鉄 155.7g 

アルミ 54.9g 

CFRP 30.3g

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、鉄の約1/5 アルミの約1/2の比重と、とても軽いことが分かります。

一般的な車いすが15㎏前後なので、今回開発された子ども用スポーツ車いすの5.7㎏がいかに軽いか分かりますよね。

また、座席と脚部分を結合するステンレス部品は、伊福精密の金属3Dプリンター技術を使用しています。

従来の切削加工した部品に比べて、3Dプリンターを用いたことにより75%の軽量化を実現。

一見、単純に軽量化するだけでは、その分強度が落ちてしまいそうですが、必要な部分を残し、不要な部分をそぎ落としているため強度は保たれるのだそうです。

次なるステップへ

車いす使用者の声から始まった「Made in KOBEの車いすプロジェクト」は次なるステップへ動き出しています。

産振財団担当者は、「多くの方にこの車いすを試乗体験してもらいたい」「障がいを持つ方にスポーツの楽しさを知ってもらいたい」と語ります。

企業と支援機関の技術と知見を結集し開発したこの「子ども用スポーツ車いす」が、全ての人々が一緒にスポーツを楽しめる環境になるきっかけの一つとなることを願います。

本件についての問い合わせ

一般社団法人神戸市機械金属工業会 神戸エアロネットワーク事務局

電話:078-360-3260 FAX:078-360-1457

神戸エアロネットワーク (kobeaeronetwork.com)

<この記事を書いた人>

さんしん妹 / 総務・広報グループ