神戸高専の技術で水中の施設検査を効率化!
~水中吸着ドローンで未来をつくる~

Universal Hands 株式会社

企業名:Universal Hands 株式会社

代表者:
藤本 敏彰 代表取締役(機械工学科 2016 度卒業)
清水 俊彦 取締役(機械工学科准教授)

ホームページ:https://sites.google.com/g.kobe-kosen.ac.jp/kobe-kosen-robotics

事業内容:万能ロボットハンド技術(万能真空吸着グリッパ)の開発・実証
(水中吸着ドローンを用いた港湾施設の検査効率化)

左から清水准教授と藤本代表

今回は、神戸市立工業高等専門学校(以下 神戸高専)の清水准教授とその教え子である藤本さんが設立したUniversal Hands 株式会社にお話を伺いました。

起業の動機・きっかけ(万能真空吸着グリッパ技術との出会い)

10年前に、教え子の藤本さん達と「世の中にないものを作りたい!」という思いから神戸高専で研究を開始しました。
当初は「外壁を登るルンバ」のイメージでした。藤本さんたちの熱意はすさまじく、研究開始の1か月前から研究室にこもって製作を続け、約1か月で試作品を完成。その後、1~2年で天井を移動できるグリッパまで作成しました!
最初は100均で購入した風船に空気を入れて試していましたが、その後、グリッパの中に粉体を入れ、吸着面に合わせてグリッパの形状を変化できる技術を確立しました。それが現在の万能真空吸着グリッパにつながっています。

近接検査用吸着ドローン。壁面にドローンがくっつく
万能真空吸着グリッパ。平らでない場所にも変形して密着

こんな事業をやっています

「人間が行けないところへ行こう」を目標に、グリッパの技術で海中を移動できるロボットを作成しました。

着目したのが港湾の岸壁。岸壁の鋼管は海水で錆が生じ、放っておくと岸壁の崩落につながります。現在は潜水士が検査を担っていますが、全国の潜水士は3,300人(そのうち1,500人が50歳以上)。一方で、全国の港湾は3,000箇所。これでは検査が追い付きません。

万能ロボットハンド技術の仕組みをヒアリング

社会情勢も切迫しています。物流業界はコロナの影響で海運の重要性が高まっています。さらには運輸業界の2024年問題で運転手の労働時間規制が厳しくなり、長時間トラックを稼働させるのが難しい状況です。そのため、今後海運の重要性に拍車がかかり、港湾施設検査の効率化・省力化は喫緊の課題です。

経年劣化による崩落などで港湾施設が一時的にでも使えなくなると、港は役割を他の地域に奪われ、それによる損失は取り戻せません。そのため、港湾施設が壊れないようなメンテナンスは非常に重要です。

現在も水中ドローンによる点検はありますが、ドローンは浮遊しているだけなので、海中の鋼管の点検作業が効率的に行えません。万能真空吸着グリッパを使うことで鋼管にドローンを固定した状況で移動ができ、効率的で的確な検査が可能になります!

水中吸着ドローンの試作品

国の補助事業に採択されました!

この技術開発・実証の計画は、国土交通省「中小企業イノベーション創出推進事業」に係る補助対象事業「国際競争力強化に資する交通基盤づくりに向けた技術の開発・実証」分野において採択されています。この補助事業での採択は全国で2件とのことで、港湾施設の点検効率化が国にとっても非常に重要な事業であることがわかります。

神戸高専との連携

神戸高専では、水中ロボットの開発・研究に力を入れており、昨年12月に実験水槽を新設しました。
それを用いた水中吸着ドローンの性能評価および神戸市近郊の港湾における水中吸着ドローンの実証実験などを行っています。
試作した製品の実証をすぐに校内で実験できるということが、神戸高専での産学連携の大きな強みと言えます。

神戸高専施設内の水槽も見学しました

今後の目標

3年後には、必要となる機能を見極めてこの水中吸着ドローンを商用化したいと思っています。

また、この技術は港湾施設の点検以外にも活用可能と考えています。例えば、神戸港に来航する船舶の船底についたフジツボの清掃や、海上風力発電の水面下にある支柱部分の清掃も行える可能性があります。

さらに先の話ですが、粉体を扱い独自技術で人間の顔のようにロボットの表情を生成することも想定しています。将来的には産業用ロボットが介護などのサービスを担える時代になると思っていますが、その際に、人とやり取りしているかのようにロボットに喜怒哀楽を表現させたいです。

今後はUniversal Handsという名称のとおり、様々な方(Hands)と協力して世の中の課題を解決したいと思っています。

財団の創業支援を利用した感想

国の補助事業に申請するために急遽会社を立ち上げる必要があったのですが、経営のことが全くわからず、司法書士や税理士も知らなかったため不安でした。そんな時に財団の創業支援を利用して、急なスケジュールで会社設立をする必要があったにもかかわらず伴走していただき感謝しています。

取材を終えて

今回の取材で、清水先生と藤本さんの長年にわたる信頼関係を感じました。研究開発当初のお写真を見ると、とても雰囲気の良い環境で研究・事業をされたことがわかります。
財団としてもそのようなお二人の人柄に触れて、ぜひ応援したいという気持ちで伴走しています。
この技術はまさに人手不足という多くの企業が抱える悩みを解決する可能性を持っています。港湾施設の保全という社会課題の解決に資するものでもありますので、ぜひ事業を成功させてほしいと思います。

万能真空吸着グリッパの可能性は、限りなく広がります!

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