千代田精機の精鋭社員が神戸高専の電子基礎実験室に集結するワケ。

 普段私たちが身近に使っているパソコンやスマートフォン、家電、車、ゲーム機まで、あらゆる電子機器には「半導体」という部品が使われており、市内でも関連部品を製造している中小製造業は少なくありません。

 高圧ガス制御機器でトップレベルを誇り、「神戸発・優れた技術」認定企業 株式会社千代田精機は、半導体製造工程に使われるガスの制御機器製造に取り組むため、社員を対象とした研修を9月3日、10日に開催しました。

日々進化する半導体製造技術。最新情報を学ぶには?

 同社では、過去に半導体製造工程に使われるガスの制御機器を製造していましたが30年ほどのブランクがありました。今の半導体製造技術に適合する機器を製造、販売するには最新の知識を学ぶことが先決と、社員向け研修を請け負ってくれる先がないか財団にご相談がありました。

 そこで、神戸市立工業高等専門学校 電子工学科長 西 敬生教授にご相談したところご快諾いただき、夏休みの間を利用して電子基礎実験室と実際の半導体製造設備を有するクリーンルームを使用し、座学と実習を組み合わせたオーダーメイドの研修が実現することとなりました。

午前は座学。言葉の意味から「半導体」を学ぶ

 9時から始まった1限目は「半導体の言葉の意味」を学ぶところから。

 西教授は応用物性・結晶工学, 電子・電気材料工学がご専門で「基本的な内容の研修を、というご依頼でしたが『電子』のことから知ってもらうのが適切と思い、この研修のために特別に資料を作成しました」とのこと。

「物質としての半導体」「素子・装置としての半導体」の項目をわかりやすいたとえも交えて、丁寧に解説されていきます。参加された34名の精鋭社員も、耳慣れない用語に戸惑いつつも真剣な表情で西教授の講義に聞き入っていました。

午後からはクリーンルームで製造工程の一部を実習形式で学ぶ

 午後は同じフロアのデバイス工学実験室(クリーンルーム)で、製造部社員を中心に8名が実際にクリーンウェアを着用して実習に参加しました。半導体の製造工程では様々なガスが必要とされ、多数の制御機器が機能しています。同校のクリーンルームはクラス1万、電気炉をはじめとする半導体製造に必要な装置が複数台備えられ、集積回路(IC)の製造を行うことができます。今回は、マスクアライナや酸化・拡散炉などを使ってMOSトランジスタの製造の一部を実習しました。  

 参加した製造部機械課 課長 休萬則之氏は、「クリーンルーム内の装置には当社のガス制御機器が実際に装備されており、実習することでこれからの製品開発の大きな参考になりました」と感想を教えてくれました。

地元中小企業の学びを高専と財団がサポート。

 西教授は「部品の一部分ではありますが、高専のクリーンルームを使って実習形式で学んでいただいたことでイメージがしやすかったのではないでしょうか。学生だけでなく企業研修を高専の施設で実施するのは非常に良い機会と歓迎しています。教員としても地元の中小企業のお役に立てるのはとてもうれしいことです」とのこと。

 半導体の世界は新しい技術が日々急速に発展し、製造工程の技術的な進化による制御機器の需要も拡大が予想されます。
 産×学がコラボしたこの研修が、千代田精機の世界の半導体市場への最初の一歩になる日が来るかもしれません。

株式会社千代田精機 本社(長田区)
神戸市立工業高等専門学校(西区)

《企業概要》

株式会社千代田精機

所在地:兵庫県神戸市長田区東尻池町7丁目9番21号

ホームページ:https://www.chiyoda-seiki.co.jp/index.php#

この記事を書いた人:産業イノベーション推進部  ナカムラ