神戸高専の専攻学生が造形した3Dプリンターによる「神戸ポートタワー」

この度、産振財団が事業連携を行っている、神戸市公立大学法人神戸市立工業高等専門学校(以下、神戸高専)の学生による3Dプリンターで造形した世界に一つの「神戸ポートタワー」が完成しました。

9月25日(水)から10月1日(火)までの7日間、神戸阪急百貨店でのイベント「Meets KOBE」が、完成後初のお披露目です。

完成した「神戸ポートタワー」

依頼のきっかけ

産振財団の販路開拓事業を行っているビジネス開発部の職員が、神戸市内事業者と共に参画する全日の百貨店イベントに向けて、神戸の最もシンボリックな装飾が欲しいと思ったことが依頼のきっかけです。
部内で議論を重ねた結果、今年リニューアルオープンした「神戸ポートタワー」が候補となりました。

次の問題は、「神戸ポートタワー」の模型をどこで手に入れるのか。

そこで普段から産学連携の取り組みを担当している、神戸高専の元教授であり、産振財団の外部専門官である赤対(しゃくつい)専門官に相談したところ、機械工学システム専攻科で3Dプリンターを扱った授業を行っている早稲田教授に本件をお話いただけることに。
早速、担当学生の皆さんに声掛けしたところ、4人の学生が手を挙げてくれ、快く引き受けてくれました。

一筋縄ではいかなかった制作過程

ポートタワーの平面図はネット検索でいくつか出てきましたが、3D図面は手軽に入手できるものがなく、学生の皆さん独自でモデリングすることに。
普段はシンプルな形の造形をすることはありましたが、建物をデータ制作するのは初めてだそうです。
普通のソフトでの造形は難しく普段の2~3倍の時間を要したそうですが、どのレベルまで創り上げられるのかという未知へのチャレンジだったとのこと。

外観の様子は公開データなどを検索して調べることができましたが、内部や細かい造りは実物を見ないと分からないと、更に4人で実際のポートタワーを訪れて調査してくれました。

塔中心のエレベーターの様子や、窓の形はフロア毎に異なっていたため、何枚も写真を撮影し、さらには窓枠の数も数えて回ったそうです。

「4人でパーツ毎にそれぞれ担当し、各自のパソコンでデータ制作に1か月余りの時間を要しました。
ちょうど依頼した時期が夏休みと重なっており、共同制作ながらもクラウド上でのデータ共有で設計できたことが大きかった。」と担任の早稲田教授は語ります。

学生に制作秘話をヒアリングしました。

左から石川さん、仁賀さん、出さん、有馬さん

有馬さん:上部担当
完成したタワーは上部からご覧いただくことを意識し、細かいところにこだわりました。
屋上のガラス部分は、フィルムを一枚一枚貼り合わせていきました。ガラスは実物と同じ枚数にするために一周回って数えました。
PORT OF KOBE の文字部分は既存データがなかったので、実物に限りなく近いゴシック調の文字体を探してサイズ調整しています。

石川さん:上部担当
公開データでは寸法が解らなかったため、実物の写真と公開データを見て調整しました。
また、窓の枚数も各フロアごとに違うため、実際に写真を撮り再現しました。

出(いで)さん:下部担当
データ制作には通常の3~4倍の時間がかかりました。塔のポールは斜めに設計されているため、処理が大変でした。パソコンが重たくなり、何度もフリーズしていました。
また、4階部分の今回リニューアルで作られたテラスをアップデートしています。是非見て欲しいです。フォトスポットコーナーもシールで再現しています。

仁賀さん:下部担当
運びやすいかつ、3Dプリンターでの造形時にいかに材料を無駄にしないかを考えた。開口部が多いため、どうしても支えの余分な造形箇所が入ってしまうため、それをできるだけ省くために塔を細かく分割して造形しました。

材料を無駄にしないという技術者目線の設計と、運びやすいという使用者目線にたった設計の両立に、技術者としてのこだわりを感じました。

最後に皆さんに完成時の感想を伺うと、
・リアルだな
・感動した
・迫力があるな
・想像していたよりかなり大きいな
・壮観だなぁ
・我が子のようだな
と、 様々な思いが形になった瞬間だったようです。

監修された早稲田教授は、
「プリントでここまで細部を再現できるとは思っていなかった。この4人でなければ、完成できなかったかもしれない。時間をかけてじっくりと取り組んでくれた。本当にびっくりさせられた。完成した現物を見て、今はありがとうの感謝の気持ち。みんなのスキルや経験が十分に生かされている。いい機会だったと思う。」と感慨深く生徒の皆さんに賞賛のまなざしをむけられていました。

また、このポートタワーは原寸の100分の1サイズで精巧に設計されており、高さは108センチ。
今回の記念にと、屋上には4人の学生のほか、早稲田教授と今回のご縁をつないでいただいた赤対専門官の6人が並んでいます。
もちろん等身の100分の1サイズと、ここでも精巧なこだわりが表現されています。

取材を終えて

産振財団と神戸高専が連携して完成した「世界に一つだけの神戸ポートタワー」
この神戸ポートタワーが、神戸と日本各地をつなぐ存在になることを願います。

最後に、神戸高専の早稲田教授、学生の皆さん
お忙しい中、引き受けてくださり本当にありがとうございました!

左から林校長、学生の皆さん、早稲田教授

<この記事を書いた人>
取材:ビジネス開発部   /ウメキ
執筆:総務・広報グループ / さんしん妹