兵庫運河と企業経営の未来をつなぐ~社会貢献として取り組む環境保全活動事例~(株式会社新川鉄工所)
株式会社新川鉄工所は、兵庫区にある金属製品の製造業です。
今回、地元「兵庫運河」での水質改善への取り組みの一環である「兵庫運河・真珠貝プロジェクト」の会長を務めておられる道林幸次社長を訪問しました。
地域での環境浄化シンボル事業
2007年から神戸市と企画し、環境浄化のシンボル事業として今年17年目を迎える“海をきれいにするプロジェクト”である「兵庫運河・真珠貝プロジェクト」。地元の子供たちへの環境学習の場として漁業関係者や地元の小学校と連携し、命の大切さを伝える活動を行っています。
神戸市内の真珠加工販売会社協力のもと、水質浄化に効果があるアコヤ貝で真珠を養殖し、子供たちと貝の成長を見守りながら真珠を採取したり水質調査やデータを収集したりと、自然をテーマに兵庫運河で様々な活動をすることで地域の方々と里海づくりに尽力されています。
過去17年間でこの活動に携わった家族は約850組。新型コロナ感染拡大期には会員募集を中断していましたが、スタッフのみでアコヤ貝の養殖活動は継続され、多くの人々のつながりにもこの活動は貢献しています。
カーボン・オフセットへの参画
また、2021年度からは地域の5団体(兵庫漁業協同組合、兵庫運河を美しくする会、神戸市立浜山小学校、兵庫・水辺ネットワーク、兵庫運河・真珠貝プロジェクト)による藻場の再生保全支援を目的とした、JBE(ジャパンエコノミー技術研究組合)の発行・販売している『Jブルークレジット』によるカーボン・オフセットに参画しています。
『Jブルークレジット』は、海草藻場などの海洋・沿岸生態系が吸収した二酸化炭素(CO2)であるブルーカーボンを対象とし、気候変動緩和へ向けた取組みを加速するための新たなクレジットとして2020年に始まり、兵庫運河干潟でのアマモの生育など藻場づくりの取り組みでの認証は全国で2番目です。生物多様性に向けた環境保全活動として認証され、2年連続で取得されています。
ブルーカーボンはグリーンカーボンと比べてまだ知名度は低いですが、ブルーカーボン生態系の方が大気中のCO2の吸収能力は高く、浅海底の泥中での貯留期間も長いことから優れたCO2吸収源として注目されています。
今後は、県外地域との環境保全プロジェクトも予定しており、道林社長は「継続して活動を続けることが一番大切なことだ」とおっしゃられています。
経営者としてのカーボン・オフセット
一見、「本業とは無関係では?」と思いがちですが、実は新川鉄工所としてもすでに環境保全への取り組みを実現されています。
新川鉄工所は、企業としてこの「Jブルークレジット」を購入しています。このクレジット購入により、カーボン・オフセットを資金面で支えているということになります。
このように売る側と買う側の双方を実践されておられることについて、道林社長は「意味のあるものとして取り組んではいるが、あえて自ら公表することでもないです。」とご謙遜されておられましたが、この2枚の証書を並べてみると、地域に密着した企業として取り組まれていることがわかります。
大手企業ではSDGsへの取り組みやサスティナブル経営は必須となりつつあるため、取引先からの要望もあるのでは・・・とお聞きしたところ、
「今はまだそれほどでもないですが、今後は大手企業との関わりの中で中小企業にも社会課題への取り組みを求められる傾向にあり、企業としての『Jブルークレジット』の購入は、CSR活動のスコア化を求められている今でも十分にアピールできるポイントとなっています。CSR活動評価においては、他社との差別化になっています。また、カーボンニュートラルについて取引先から要望されても、すでに実施していると言えますね。」
社会貢献活動のその先に
「カーボンクレジット購入はこれから益々増加する傾向にあり、削減コストを誰かが支える必要がある」と道林社長。今後、世代が変わっても、会社を永続するためにビジネスとしてこのクレジットを購入し続けることで、ビジネスそのものもいつか有利になる時代が来るのではないかとおっしゃられていました。
「社会貢献活動に対してこれからも意識をもって考えることが、未来の企業成長に直接つながる」
具体的な企業経営と社会活動との関係性を今回のお話で垣間見ることができ、道林社長の「兵庫運河と企業経営の未来の姿」を見据える笑顔がとても印象的でした。
企 業 名:株式会社新川鉄工所
代表取締役 道林 幸次 氏
業 種:金属製品製造業
従業員数:10名
住 所(本社):〒652-0853 神戸市兵庫区今出在家町2丁目1-15
電話番号:078-652-3113