運送業の2024年問題を乗り越えろ!事業承継支援事例
~親族承継編~(後編)

三喜産業株式会社(神戸市東灘区)

前編)から続きます。

井本社長の就任後、心強い援軍が加わることになりました。社長の兄であり、製薬会社での営業経験のある井本英伸氏が営業部 部長として入社。各現場の管理者が経営幹部として会議を重ね、会社の未来を描きながら奮闘しています。
今後、一番重要な営業部門の強化を行う上で、兄の加入は何よりも心強いはず。営業面だけでなく、会社全体をバランスよく見ることができる経営感覚に優れた救世主です。

井本英伸営業部長(左)と井本雄介社長(右)

転職からのスタートをばねに

井本部長は、

「未経験の業界への入社だったので、前職で培った経験を基に自分に何が出来るかという思いと常に葛藤している。たとえ困難があっても『人にありがとうと言われ、喜んでいただけること』が何よりのモチベーションなので、とにかく前進!
社員やお客様・共に歩む全ての人々に喜びを届けたい。

三喜産業に入社して分かったのは、自社には優秀な現場の人・職人が多く存在するということ。
働く人々の見える化・言語化を進めれば、更なる職場全体のレベルアップが出来るはずだ。」

と熱意を語ってくれました。

迫りくる 2024 年問題

運送業は 2024 年問題を抱え、人材不足が深刻化しています。現場の所長やマネージャーを交えて、現場での課題を聞きました。まず一番に挙げられたのは、やはり人材不足。時短のママさん雇用を積極的に取り入れ、時短勤務や就業時間考慮や急な休暇にも柔軟に対応しています。

また、近隣の専門学校の外国人留学生も 6~7 年前から勤務しており、現在は 30 人近くが就労しています。国籍はスリランカ、ネパール、ベトナムの留学生が占めています。

日本語が苦手であったり、共同作業が苦手であったりする従業員には、働きやすい工程作業への配慮をおこなっています。

経験の浅いドライバーには、熟練の積込担当者が配送業務を自らサポートしています。

創業 51 年の会社を支え続ける仲間たち

三喜産業は、40 代から 50 代の割合が多く占める配送業界の中でもコミュニケーションが取れたアットホームな社風です。
「定着率が高いこの会社が存続していくには?」との質問に、「三喜産業の付加価値をきちんと伝えること」と幹部の一人。
「ミスや事故率が低く、時間に正確な配送であることはもとより、高くても安心感のある会社として信用を増やすためには、日常の積み重ねが大切だ」とセンター長。

「これから、会社に新しくどんな人が来てほしいか?」との質問には、
「元気で明るい人、加えてそれぞれの趣味を生かしつつ仕事に取り組める人」と、従業員の多様性を重んじる様子も伺えます。

三喜産業の未来へ

未来や環境に優しい取り組みとしては、Eco な取り組みやグリーン経営の他にも、子ども達が描くラッピングトラック事業や共配による CO2 削減に向けた取り組みを行っています。
「自分たちの子供が生きる未来に、どんな地球を残せるかも課題の一つです」と社長。

最近では、海の豊かさを守る「目指せ!プラごみゼロの海」プロジェクト活動に共感し、自社でできることを模索しています。

三喜産業配送システムの大きな特徴の一つは、
常温商品と冷蔵商品を一台で同時に配送できること。
運搬費用削減や業務効率化と共に環境にも大きく貢献できる仕組みです。

内装は仕切りで区切られており、従来ではなかった一か所の配送先に保温形態が異なるものを一気に納品できるというメリットがあります。

そしてもう一つは、小ロット対応が可能なこと。
必要な数量以上を発注しなければならない「最小ロット問題」は配送先にとって大きな負担となっており、環境の面からも望ましくありません。

「商品の仕分けや配送で小ロット対応できることは、自社の唯一の強み」三喜産業はそのお悩みを請け負う会社として新事業にチャレンジします。

51 年の長い社歴をたどりながら、現場のプロフェッショナルな従業員と新しい枠をどう広げていくのか、未経験なことをどのようなプロセスで進めていくのか、がこれからの課題となります。

2025 年には六甲アイランドに待望の自社共同配送センターを建設予定。
・既存従業員の仕事先を確保
・今あるトラックなどの資源を最大限に活用
・保管・作業・入出荷・在庫管理・配送のトータルコスト設定による流通のスリム化を目指します。

創業以来最大のピンチを迎え、兄弟二人三脚でどのように乗り越えるのか。
井本部長は、社長と共に古い体質ではなく令和の新時代の運送業の形を創り上げようとしています。

「今後は社員の雇用を維持しながら、今ある貴重な人材と車両を最大限活用し、培った51年の品質保持・安全輸送の経験の付加価値をもって、地元、神戸市東灘区に根付いた事業再構築を行います。また、様々な団体とのコラボレーションを通じた社会貢献活動によって物流業界で働く人間を発信するSNS活動を今後、企画していきます。」

社長と部長の未来への自社発展の期待を乗せて、今日も三喜産業のトラックは 前へ、前へ、走り続ける。

最後に、財団のホームページを見る人へのメッセージは?

経営者の皆様は自社の強みを見つめ直し、お困りになられている方々の為に何が出来るかを真剣に悩まれているかと思います。

自社のみでは不可能な事も、他社のお力をお借りできれば乗り越えられる事も多いはず!

『財団様を通じて多くの方々と繋がりを持ち、課題解決が出来る喜びを!』

ありがとうございます!

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