大型高精度機械加工の現場で活躍する神戸高専出身者。即戦力になれる理由は…。
旋盤1台で創業した金属加工業から、航空宇宙産業など大型部品加工へ。
神戸鉄工団地(神戸市西区)にある株式会社協栄は、大型高精度機械加工を主要業務とするものづくり企業。現代表取締役社長 米崎 良氏の父 圭治氏が旋盤1台で1980年に創業し、2008年に現在の鉄工団地内に本社を移転。その頃から航空機のジェットエンジンの部品製作を始めるなど、大型で高精度な金属加工に取り組んできました。
現在は社員17名、大型工作機械を駆使して、航空宇宙産業をはじめ大型ポンプ部品、プラント関係部品から丸編機まで幅広い分野の機械部品製造に取り組んでいます。
社長自身も神戸高専出身。中途採用の後輩たちが即戦力として活躍!
米崎社長は神戸市立工業高等専門学校を卒業後、岡山大学、大手機械メーカーを経て、25歳で父が経営する協栄に入社しました。
2024年4月に職員ブログ「父の跡を継ぎ、20代で経営者になった高専卒業生。工場を訪問し恩師が感慨」の記事でも登場いただいた赤対秀明シニアアドバイザーは、神戸高専での米崎社長の恩師でもあり、今回も取材に同行いただきました。
「赤対先生の授業は、冒頭の雑談が楽しかったです。地元の企業のことをよくご存じで、魅力的な中小企業の話は特におもしろくて10分や15分で済まなくなることも度々でした。叱る時も頭ごなしでなくて、学生をよく理解してくれているので、相談もしやすかったです」と米崎社長。
赤対シニアアドバイザーも「米崎君は熱心な学生で、よく質問や相談をしに研究室に来てくれたことを覚えています」と当時を懐かしく思い出されている様子。高校や大学とも違う、神戸高専ならではの先生と学生の距離感が、20年ぶりの再会をこんなに和やかにしているのかもしれません。
株式会社協栄では製造現場の社員17名中、神戸高専出身者が4名在籍しています。
「学校の後輩が縁あって入社してくれているのは嬉しいですね。即戦力として活躍できているのは、どの学科出身でも段取りなど仕事のやり方を自身で考え、率先して動く力を身に着けているから。高専出身者以外でも、社員には積極的に資格を取得させ仕事のレベルアップにつなげています」とのこと。
工場見学の際に教え子たちと再会した赤対シニアアドバイザーも、実際に大型工作機械を操る彼らの姿に感慨深い様子。教え子の方たちも急な恩師の訪問にびっくりしながらも、胸を張って仕事のことを報告されていました。
また航空機部品の加工を手掛けているのは子育て中の30代女性の吉田さん(上の画像 右端)。製造業の現場は初めてということですが、着実に仕事を覚えているとか。
「製造現場の知識がない人もスムーズに仕事ができる、女性も高齢者も働きやすい職場にする、そのことに今取り組んでいます」と社長。
経営者になったばかりの自分を成長させてくれた神戸青年経営研究会
2014年、35歳の若さで父の後を継ぎ代表取締役社長に就任した米崎氏。父が会長、母・兄・姉が経営陣として支えてくれていましたが、やはり経営者としての孤独感を感じていました。「鉄工団地協同組合の先輩経営者が誘ってくれて、『神戸市機械金属工業会 青年経営研究会』に入会しました。同じ製造業の同じような年代の経営者は、経営や技術など同じ悩みを抱えています。それを共有したり、協力して解決したり、飲んで発散したり、当時の自分はとても助けられました。38歳の時に会長をさせてもらい組織運営を学んだことが、その後の会社経営に非常に役立ちました。会員企業同士で仕事の取引が発生することもあり、とても貴重な場だと実感しています」
もうすぐ卒業の年齢を迎えますが、後輩会員がこの会をさらに盛り上げ、発展させることを願っているそうです。
取材を終えて:
工場の一番奥には、今年7月に導入されたばかりというDMG Precision Boring マシニングセンタ:横中ぐりフライス盤が設置され、神戸高専出身の方の手によって稼働していました。
中小製造業の現場で活躍する高専出身者は、どの企業においても貴重な存在。米崎社長も彼らの能力を高く評価されています。
これからの目標をお聞きすると「“守りながら攻める!”ですね。先代が築いてきた経営基盤を基に、新しい人材をどんどん迎え入れ、得意分野である大型加工を進化させていきたいです。」と米崎社長の力強い思いが伝わってきました!
この記事を書いた人:産業イノベーション推進部 ナカムラ