B to Cへの挑戦 ~株式会社トキワの新規事業立ち上げまでの軌跡~

株式会社トキワ

長田区で金属製品加工業を営む「株式会社トキワ」が、こうべ産業・就労支援財団の支援策をはじめとする公的支援をどのように活用して、市場も顧客も異なる新規事業を立ち上げたのか、その軌跡をご紹介します。

企業情報

事業者名:株式会社トキワ
所 在 地:兵庫県神戸市長田区梅ケ香町2丁目1-31
設  立:1985年4月
代 表 者:福井 育子
事業内容:金属製品製造・加工、ヘルスケア商品・リハビリ用具の考案、開発、試作、販売
同社HPhttps://kobe-kikai.or.jp/company/tokiwa/

活用した財団の支援事業

時代は変わった。いつまでも受け身のままじゃ、だめだ。

「設立して41年。先代から会社を引き継ぎ、ここ長田区で金属加工業をしています。」と語るのは、取締役専務の福井 一仁氏。株式会社トキワで加工された金属部品は、医療機器の心臓部などにも使われており、現場を支えているという。
「私がこの業界に入って35年になります。時代が変わるにつれて、今までのお客様との付き合い方も変化していったとすごく感じています。」
今は、返答の速さも、見積の根拠も、提案の中身も、全部“比較される”。

「モノづくり、ことさら機械部品の製作というのは基本受け身状態で、状況を打破するために新たなものをどう発信・展開・仕掛けるか考えていました。」

福井一仁取締役専務

きっかけは、ゴルフボール

リフレクソロジー(反射療法)は、足裏や手のひらをやさしく刺激して血流やリンパの流れを促すリラクゼーション。福井氏は机の上にあったゴルフボールを足裏で転がしているときに、今回新規事業を立ち上げるきっかけになった商品「クレーターボード™」の原案を思いついたという。

商品の試作には、神戸市のものづくり工場内にある「ものづくり試作開発支援センター(NIRO 3D ラボ)」を活用し、神戸芸術工科大学教授から色や形状のアドバイスも受けた。

金属加工を活かして制作した試作第一号
完成したクレーターボード™と販促チラシ(足形は参考購入したもの)

しかし、商品販売は未知の領域。ひとまず取扱説明書が必要だと思い財団に相談したところ、取扱説明書だけでなく、マーケティングの考え方を取り入れるようアドバイスを受け、必要な外部専門家の解像度が上がった。財団の専門家派遣事業を活用して、マーケティング戦略の立案や販売計画の支援に強い田中診断士の伴走が決まった。商談の進め方からテストマーケティング、商品のネーミングや値付け、利益計画や販促物の効果的な使い方まで、新商品販売に向けた様々な支援を受け、時には田中氏を壁打ち相手としながら、本格的な取り組みを進めることができた。

「商品モニターなど、商品の良し悪しを見て頂ける先を模索していたところ、和歌山県在住の従兄と話す機会があり、地域総合型スポーツクラブの副理事長も務めていることもあり相談してみると、理事長が整骨院の院長なので繋いでもらえることになりました。その方は、偶然にも和歌山県柔道整復師会の会長であり、協同組合へ繋いで頂き、モニターさんのレビューやチラシ作りの協力を頂きました。」

並行して、知的財産権(実用新案・意匠)の相談では、財団の「知的財産権取得促進連携事業」を活用し、(公財)新産業創造研究機構(NIRO)の知的財産センターを通じて弁理士の紹介を受ける。そして、財団の知的財産権出願に関する補助金を受けて、実用新案権を取得することができた。

商品を伝えるデザイン

一般消費者向けの商品では、パッケージなどのデザインも大事。商品のイメージを左右するだけでなく、手に取ってもらうきっかけを作るデザイン領域は、クリエイターの得意分野だ。ちょうど、令和6年度から財団で企業×クリエイターマッチング事業を開始していた。その最初のキックオフミーティングに、福井氏も参加した。

「正直、デザインについてはどうすればいいか途方に暮れていました。その時に出会ったのが株式会社RIGADELの薮内さんでした。」藪内氏と協業した「デザインUPプロジェクト」の実施を通して、新商品のイメージを作り上げ、ロゴマークや販促チラシ、パッケージデザインなどの成果物が出来上がった。その成果は、翌年度のキックオフミーティングで紹介された。
「令和7年度のキックオフミーティングで、パネルディスカッションに登壇して事例発表させていただいたのは記憶に新しいですね。」

シニアの力で管理を整える

「今まで金属の加工製品ひとつひとつ、手書きの工事台帳で管理していたのに、新しくBtoC向けの製品の在庫や発注をどうやって管理するか頭を悩ませていました。」

福井氏は 財団の「シニアキャリア相談・就労支援事業」を活用して神吉(かんき)氏と出会い、その悩みを解決することができた。神吉(かんき)氏は30年以上SEをしており、システムづくりのプロである。

福井氏からの相談に対応し、即日、財団が神吉氏を紹介、すぐに採用が決まった。

同社での取り組みを語る神吉氏

「私ももう77歳なので10年後に向けてのシステムを構築、とは言えないですが、1年先に、他に若い方が入ってきたときのために管理業務のインフラを先に整えるのが役目だと感じました。」優しい声で語る神吉氏。

「在庫や発注などを管理する人を困らせないように、一気にDX化を進めない。Excelで受注管理ができるように自動化できるところと、人の手が関われるアナログな部分もあえて残しながら、管理業務の改善を行いました。」

株式会社トキワ のこれから

「これからも大事にしていきたいのは、人と人とのつながりですね。金属加工業も、今回の新事業も、どちらも振り返れば周りの協力のおかげで続き、立ち上げることができました。」福井氏は目に力を込め、そう語る。

「これからもたくさんのアイデアを形にしていこうと考えています。
何か小さな考えの種を持っている他の事業者さんに伝えたいのは、“周りを頼る”ということ。
人とつながることで種は新たなひらめきになり、芽が出ると強く感じます。」

様々な支援をうまく活用し、新規事業を立ち上げた同社。

これからこの挑戦がどのように広がっていくのか、その歩みに今後も注目していきたい。

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